ならわい2023

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第1回目 ペーパルのフィールドワーク

プロジェクト

廃棄食料から生まれたアップサイクルペーパー。取締役の矢田 和也さんと商品企画に取り組んでいきます。

8/20のタイムテーブル

10:00-チームごとのフィールドワーク
15:00-ふりかえりと発表
17:00-解散

この日は、チームごとに企業の現場を訪問するフィールドワークを実施。

その後はBONCHIへ戻り、フィールドワークにより「わかったこと」をもとに、「これからのこと」をまとめていきます。

春日大社で紙に触れる

ペーパルチームのフィールドワークは、春日大社からはじまりました。向かったのは、境内に位置する飛火野(とびひの)。

この場所では、ナチュラルホルンの音色で鹿を呼び寄せる「鹿寄せ(しかよせ)」が行われていました。

そんな鹿たちのごはんになる「鹿せんべい」。

その自動販売機が、春日大社にあります。

夜間や早朝の奈良公園では、観光客が、鹿せんべい以外のエサを与えてしまうことで、鹿の病気が発生していました。

そこで、奈良県ビジターズビューローから相談を受けて、商品化に至ったのが、こちら。

「自販機用鹿せんべい」のパッケージには、ペーパルが開発した「kome-kami」が使われています。

万が一、パッケージをポイ捨てされてしまったとしても、鹿が食べてしまわないようにしっかりと厚みがあります。くわえて、kome-kamiは蛍光材不使用。念には念を入れてつくられています。

ペーパルへ

春日大社をあとにした参加者たちは、ペーパルの本社へと向かいました。

紙の倉庫を訪ねる

紙の卸売業を営むペーパル。

その倉庫は、まるで紙の迷路。ビルのように紙が積まれています。

「これは新潟から。これは八戸からですね。あっちは静岡です。」

日本各地でつくられた紙が大集合している、といった様子のペーパルの倉庫。

はじめて目にする紙の量に、参加者たちは驚きをかくせません。

そんな一つひとつの紙にも、名前があります。ここで矢田さんが口にしたのは、ヴァンヌーボー。

「ヴァンヌーボーは、ざらざらとした手触り、ナチュラルな風合いを持ち合わせながら、写真やイラストをきれいに印刷できるます。1994年の発売以降、日本国内にとどまらず、韓国や台湾でも大人気となった紙なんです。ただし、価格も品質相応。より手ごろに選べる紙として、『B7トラネクスト』が誕生しました。」

B7トラネクストは、空気を多く含むことで、軽くて厚みのある本づくりに適している紙。出版業界を中心に人気を博しています。

しかし、日本の出版業界は“西高東低”。出版社の多くが関東に集中しているため、関西では知る人ぞ知る状況でした。

「B7トラネクストをカタログやパンフレット向けに展開できる可能性があると見込みました。そこで、ペーパルでは積極的に導入を進めています。」

この紙を利用して、BONCHIのパンフレットを制作したデザイナー・倉有希さん。

この日は参加者とともに、ペーパルの見学へ。

倉庫内には、ほんとうに多様な種類の紙がありました。

紙のことになると、話が止まらなくなる矢田さん。

「光によって透けにくいよう、色紙をセンターに挟んでいる『キリフダ』は、トランプに用いられる紙。また、クリーニング屋さんのクリーニングタグに使用されるのが『耐洗紙』。洗っても溶けることなく、薬剤にも強い特殊な紙なんです。」

「それから、今関西に広めようとしている紙が、『ハイアピスneo』でして……」

そして最後に、廃棄米を活用したアップサイクルペーパー「kome-kami」を見せてくれました。

「米を使った洋紙を、現代で実用できる品質と価格を実現することで、普及させたい。かつての日本にあった文化を、ちょっと新しい形で生まれ変わらせたいんです。」

「アップサイクルペーパーを加工した製品を見に行きましょう。」

アップサイクルペーパーに触れる

本社の社屋に移動し、アップサイクルペーパーを用いた紙製品を見せてもらいます。

ここで、参加者に自分の名刺を手渡す矢田さん。

「この名刺は、廃棄されていたニンジンの皮をアップサイクルしてできた紙素材『vegi-kami にんじん』です。」

こちらは、食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地株式会社と協業開発した紙。野菜のカット工場で出る野菜くずを活用できないか、という思いから生まれたそう。

vegi-kami にんじんを手にすると、ナチュラルな風合い。アップサイクルペーパーは、環境配慮型の製品であることに加え、紙としての魅力も大切にしていることがわかります。

「わ〜、この紙、めっちゃお茶の香りする!」

矢田さんから参加者へ。次から次へとアップサイクルペーパーを手渡すうち、不思議な光景が広がりました。

参加者の一人が、紙に鼻を近づけていたのです。

それは、緑茶を淹れる際に出てしまう“茶がら”を漉きこんだ「茶紙(ちゃがみ)」でした。

紙に五感を刺激されたことで、参加者から質問が飛び交います。

「わたしは農家さんと仕事をすることがあって……摘果したみかんで紙をつくったら、みかんの香りがしますか?」「ひょっとして、醤油粕(かす)なんかも紙にできますか?」

別の参加者からも感想が。

「紙って大事ですよね。わたしは勤めている会社で、パンフレット制作を手がけています。紙にこだわると、ちゃんと気づいてくださるお客さまがいます。」

矢田「気づいてくれる人は、企業のファンにもなりやすいように思います。アップサイクルペーパーを選ぶことは、企業のブランディングにつながるんですね。」

そこへ、メンターの佐藤さん。

「パッケージにきちんとお金をかけることが、企業のブランディングになる。そうした日本のものづくりに着想を得た海外企業もあると言われています。消費財や家電メーカーが多いからでしょうか。紙業界を見渡すと、関西がパッケージに強いですよね。」

発表

その後はBONCHIへ戻り、フィールドワークにより「わかったこと」をもとに、「これからのこと」をまとめていきます。

そして、最後に発表を行いました。

わかったこと

・アップサイクルペーパーは環境に配慮したプロダクト。とても魅力的な取り組みなので、どうアピールしたらより多くの人に伝わるのか。どうアピールしていくかが大事だと思いました。

・もし、新たな素材でアップサイクルペーパーを開発する場合は、実験してみないとわからないようです。

また、2日間の振り返りとなるコメントも。

「1日目に、チームビルディングをしっかりできてよかったです。おかげで、『自分はこういう人間かな』と薄々感じていたことを再認識できました。弱い部分も含めて。」

「これまでも、『自分でプロダクトをつくりたい』と思いつつ、実現できる環境がありませんでした。今回は、もう、つくることができます!なんとかして実現したいな!空想で終わらせたくないな!」

これからのこと

・鹿のふん、美容室で出てくる髪の毛、オクラの茎、カフェから排出されるコーヒーかす……素材は無限に考えられそうです。また、用途も無限に考えられそうです。

・だからこそ、「既存のアップサイクルペーパーを活用した紙のプロダクトを開発して、BtoCで広く販売していく方法」も、「BtoBで、たとえば鉄道会社のポスターに絞って提案する方法」も考えられそうです。うーん、迷います……。

参加者やメンターからの質問

Q.なんでも紙になるの?

A.向き不向きはありますが、無機物であれば可能性があります。
Q.そうすると、可能性が無限になるので、軸があるとよさそうですね。

A.なるほど!ありがとうございます。
Q.アップサイクルペーパーを売りたいですか?それともアップサイクルペーパーのプロダクトを開発して、販売したいですか?

A.どちらも考えられます。
Q.プロダクトを開発する場合、参加者のみなさんが自らプロダクトを考えるだけが方法ではなさそうです。たとえば、印刷会社さんを広く募り、プロダクトを考えていただく。あるいは、大企業一社にしぼり、用途を考えて、提案していくなど。

A.ありがとうございます。

第2回目は9/3です。

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