活動記録

第5回目 最終発表

最終発表@奈良市

ならわいは、県外在住の参加者と奈良の企業がともに、新規事業(なりわい)づくりに取り組むプロジェクトです。

奈良で働き・暮らすという選択肢を増やすため、「移住×起業」を提案するプログラムとして、2024/9/6にキックオフを迎え、4ヶ月間にわたって新規事業に取り組んできました。

12/15に開催された第5回目は最終発表。受入先企業に向けて提案を行います。

会場のBONCHIに到着すると、発表に向けた最終調整を行うリリオンテチームの姿がありました。

12/15のスケジュール

11:00- 全体の企画説明・見学企業紹介
11:05- あいさつ
11:10- 各チームから発表
12:30- 昼食&懇親会
14:00- ゲストトーク 坂本大祐さん(合同会社オフィスキャンプ 代表社員)
15:30- 参加者個人のふりかえり
16:00- むすび

はじめに

4階のコワーキングスペース「TEN」には、参加者と受入先企業にくわえて、運営事務局のみなさん、見学に訪れた地域の事業者さんなど、30人以上が集いました。

笑顔で開会のあいさつをしたのは、今年度から事務局を務めるあいこさん。ならわい2023への参加をきっかけに、関東から奈良へ移住しました。自身の参加の経験も活かしつつ、自分ごととして、プロジェクト運営に取り組んでいます。

「今日から、第889回目の春日若宮おん祭がはじまりました。せっかくの機会なので、参加者のみなさんも行ってみてはどうでしょう?」

つづけて、ならわいを企画する奈良市産業政策課の柏木課長。4ヶ月のプロジェクト期間中は、チームをエンパワリングしてきました。

「わたし自身、並々ならぬ思いでならわいに取り組んでいます。奈良の企業さんとの対話を重ねるなかで、奈良市役所の役割についても考えを深める機会になっています」

「そして、9名の参加者のみなさんがアツい!高い熱量がひしひしと伝わってきます。人に想いを伝えるときは、情報にくわえて、情緒の伝達が欠かせません。その点、今年のメンバーもバッチリ!」

柏木課長が、グッと高めた提案への期待値。続く発表は、それをやすやすと超えていく内容でした。

チーム発表

ここからは3チームが、各10分間の発表を行います。

バンビシャス奈良

どんなプロジェクト?

プロスポーツ、どう経営する?バンビシャス奈良・加藤社長と「ロートアリーナ奈良の全試合観客満席」を設計します。

毎試合1,000名の観戦者数増加を目標に掲げたチーム。3年間の中期計画を描いた上で、この日は1年目の提案を行います。

「スポーツ観戦から楽しい一つのイベント参加へスイッチしたい。そのために情報収集から帰宅後までの行動をデザインしたいんです」

ターゲットとして設定したのは、子育て世代とZ世代。

「その情報収集のメインはInstagramとLINEです。奈良のお出かけ情報に関するインフルエンサーに依頼して、お出かけスポットの一つとしてバンビシャス奈良を情報発信したいんです」

「興味を持った人に、LINEをさらに活用。バンビシャス奈良ファンの発信基地にします。たとえば『はじめての観戦ガイド』を実施します。またアンケートを行ったことであきらかになったのが、マスコットキャラクターのシカッチェの根強い人気。そこで『今日のシカッチェ』をコンテンツ配信したいです」

「そうして、既存のリソースのなかにシカッチェを盛りこんでいくスモールスタートです。実は、シカッチェを入口に、取組みをリストアップしていくと51個になっちゃいました(笑)」

51個という提案にどよめく会場。

「そうして会場に訪れたみなさん。会場の一体感も演出したいんです。“シカチューシャ”の自作キットを提供し、アリーナを“バンビシャスレッド”で染めたいんです!」

受入先企業の声

さて、受入先企業の反応は?バンビシャス奈良の加藤さんに話をうかがいます。

「細かいところまで提案があってうれしいですね。バスケを見ればいい、じゃなくて。小さいお子さんも来ていますので、ルールがわからないけれど来たら楽しい。そういう要素も家族に来てもらうには大切かな。シカッチェもうまくつかってもらっていますね、SNSもまだまだ足りないのでやっていきたいところもありました。手づくりのシカチューシャもいいですね。販売はしているんですが、2、3人お子さんがいるとむずかしい。ちょっとしたアイデアで勝負しているところがすごく大切ですね」

「もう一つ課題をいうと、一度試合を観戦してくれた人が、なかなかリピーターになっていません。そういう人を狙うのはいいな。今後もバンビシャス愛が続くのであれば、知らない方にも届く企画が提案いただけるとうれしいです」

つづけて、4ヶ月間にわたりチームのメンターとして伴走してきたメンターの田島さん。

「チームはみんないそがしいなかで、ならわいの各回終了後にグッと話を詰めていきましたね。わたしも奈良県民ですが『ここには何もない』と言われがち。県外にエンタメを求める傾向があります。そこで『いやいや奈良にはバンビシャス奈良があるじゃないですか』という提案です」

この日、ゲスト企業として見学に訪れた奈良春日山酒造さんからも質問がありました。

「提案のなかにあるキッチンカーが気になりました。どういった内容を想定されていますか?」

かわかみさん

「キッチンカー自体はすでに会場に出店しています。今後は、各選手の地元や相手チームの郷土料理を提供できたら。『ロートアリーナに行くと、日本各地の郷土料理を味わえる』というデザインをしたいんです」

奈良春日山酒造さん

「ありがとうございます。ドリンクについて、ぜひうちでも協力できたらと思います」

奈良交通

どんなプロジェクト?

2023年に創立80周年を迎えた奈良交通株式会社。テーマは貸切バスからカルチャーを。奈良交通 地域連携推進グループと「バスを活用してワクワクする体験」を考えます。

はじめにふくいさんからビジョンの共有です。

「わたしたちは、人と人をつなぎながら、はしり巡って、奈良のあちこちまで光をとどける」

そこで提案したのが、NARA TOMOプロジェクト。

つづいておおくらさん。

「あらたに奈良で生活する人に、奈良のことを知って、好きになってほしいんです。2025年は奈良で守り人(もりびと)を中心にしたワークショップを開催します。水、木、土。定員30人の3回です。たとえば木のプログラムでは吉野町の辻木材商店さんや吉野杉の木桶仕込みの片上醤油さんを訪ねたい。特別車両の“四神シリーズ”を利用させていただきたいです」

広報については、Webサイトやショート動画も制作する想定。

「さらにコミュニティを広げていきたいんですね。たとえば1年目の参加者が2年目のホストになる。そうして、人づてで輪が広がっていけたら」

受入先企業の声

さて、受入先企業の反応は?奈良交通の浅井さんに話をうかがいます。

「正直衝撃をうけました、すごい衝撃でした。NARATOMOというネーミングがわかりやすくていいですね。第1回目で『奈良はお寺神社だけありません』と共有させてもらいました。ぼく自身とても大事だと思っている紀伊半島の山岳信仰を具体化してもらいました。四神シリーズの利用は、うーん、ハードルは高いかもしれませんが(笑)」

つづけて、4ヶ月間にわたりチームに伴走してきたメンターの安田さん。

「みなさんの提案のおもしろいポイントは、3点あります。1点目は県民向けであること。奈良ってたくさん魅力的なところがあるけれど、出会うことのないまま出るかたもいます。2点目は、つながりをつくる点。3点目は、1年目の参加者が、2年目のホストになりうること。奈良独自のカルチャーが生まれそうです」

リリオンテ

どんなプロジェクト?

奈良のおいしいとは。リリオンテ・栢森(かやもり)社長と「国産青果クラフトチップスの商品企画」を描きます。

発表開始にあわせて、クラフトチップスを会場に配るリリオンテチーム。

「菊芋、美味しいなあ!」

という声が会場のあちこちから聞こえてきます。

「社員になったつもりで商品企画を行います」と口火を切ったのがメンバーのたかやしきさん。

「数あるお土産の中から選んでもらうには。まずはクラフトチップスを知ってもらうためにどういう販路があるのか考えました。そして、奈良を感じてもらうには。最初のフィールドワークで農家さんを訪ねて菊芋をつくりはじめた思いをうかがいました。また柿農家さんの「青果は自分の投影」という言葉もありました。

そこでリリオンテチームが考えたのは「誰に届けたい?」でした。

「お土産店を訪ねる観光客ではなく、カフェでゆっくり過ごすなど、自分の楽しみのために奈良へくる人をターゲットにしたいと思いました」

ではどうやってゆっくり奈良へくる人に届けるか。

「ゆっくりした時間を過ごせるバーやカフェで食べてもらいます。かつ、できるまでの背景を感じてもらいます。奈良であることが重要なんですね。奈良の生産者の想いを届けるためのコンセプトカードを合わせて配ります」

また、中間発表で栢森さんから「メンバーのみなさんがワクワクして、食べたくてたまらないおかしってどんなものですか?」というエールを受け取ったメンバーたち。

柿を使った「NARANOKI」「NARANOKO BITS」という2つの新商品の提案を行いました。

「今回の提案は実現性を考えるとまだまだ荒いもの。実現できるまで考えていきたいです」

受入先企業の声

さて、受入先企業の反応は?発表の様子をうれしそうに撮影していたリリオンテの栢森(かやもり)さんに話をうかがいます。

「せっかくクラフトチップスのプロジェクトに参加いただけるのだから、ワクワクしてもらいたかったんです。中間発表を聞いているときに『あれ?ワクワクしていない?』と感じたんです。今日はクラフトチップスを配るなどのサプライズもあり、ワクワクし続ける10分間でした」

「クラフトチップスは、2025年の春から販売をはじめます。いろいろな方に知っていただくためにも、これからもみなさんと一緒にできたら」

つづけて、4ヶ月間にわたりチームのメンターとして伴走してきたメンターの佐藤さん。

「中間発表で、栢森さんから激励をいただいてからの22日間が怒涛でしたね。新商品の提案については、アイデアを考るところから『これもやりたい』『あれもやりたい』。夜な夜なミーティングを重ねていきました。ほんとこれ、やりたいよね。実現していきましょう」

ゲストトーク

ならわいのプログラムは今日で終了ですが、3チームからは最終発表を通じて、ここからの話がでました。

そこで、はじまりのトークを行うのが、オフィスキャンプの坂本大祐さん。奈良県東吉野村を拠点に、デザインをつうじた活動を続けています。

「今日持って帰ってほしいのは『変わり続ける変化の生まれかた』です。自分の暮らしている東吉野村は、移住者も増えて、いろいろなコトが起こり、どんどん楽しくなっています。だけど、自分が死んだ後は、ちょっとわからない。変化はどうやったら続くんでしょう?」

「政治や国家が変わるという大きな変化は、長続きしないものだと思うんです。たとえば150年前に起きた明治維新。たくさんの人が血を流して、日本のOSを変えたわけですが、そのとき思い描いた日本にはなっていませんね」

「政治や国家をごっそり変えようとするのではなく、自分たちの足元をこっそり変えるんです。でも大胆に。その足元が、つながる」

参加者個人のふりかえり

ならわい参加者のみなさんに4か月の活動を通して、感じたこと・考えたことなどについて、振り返っていただきました。

リリオンテチーム

まつもとさん

「ほんとうにやりたいことをやっちゃう」を体感できた4ヶ月間です。今の仕事ではやってしまいたいけれど、なかなかできない立場にあるので、なおさらそう感じました!本職の仕事よりもならわいがありました。

たかやしきさん

ただただ奈良が好きで、全日参加できるから、参加しました。すごく楽しい4ヶ月間になりました。今までは一人でうろうろしていた奈良。外から見ていた奈良を内側から見れたんです。今は、関東でアプリ開発の仕事をしているんですけど、リリオンテさんに関わることで「やっぱり自分はものづくりが好きなんだ」と実感。この先も関わりたい!

しげもりさん(奈良出身)

たまたまリリオンテチームになりました。会社での仕事は、一人で行うことが多いんです。だけど、ならわいはメンター、メンバー、市職員の方もいて形になりました。仕事は一人ではできないものですね!来年早く奈良に戻ってきたい。早めに帰りたいです!

奈良交通チーム

ひしかわさん(奈良出身)

想像以上に、刺激いっぱいのならわいでした。いろいろな話を聞いて、いろいろな人とかかわることで、『早く奈良に帰ってきたい!』という想いを強めた4ヶ月間でした。わたしは言語化が大の苦手で。(胸を指して)ここではわかるけど、言葉にできないんです。でも3人1組のチームで取り組んだから、発表までたどり着けました。プロジェクトは、ぜひ実現したい!来年は、ますますもっと奈良に足を踏み入れたいです。9月のならわい初日に、メンターの安田さんから「奈良でみりん醸造するの?」と聞かれたんです。ならわいでのいろいろな経験を経て、自分で「無理」って決めるのはやめようと思いました。奈良で育ったお米、奈良の水、奈良で育った吉野杉の木桶で、みりんを仕込めたらいいな。できるかわからないけれどそういう夢ができましたのでみなさん応援お願いします。

ふくいさん(奈良出身)

地元ですごい楽しい4ヶ月でした。奈良は、年3回帰るのに居心地のいい場所だと思っていました。いろいろなバックグラウンドを持っている人とプロジェクトに取り組めてよかった!今は神奈川にいるんですが、早いうちにUターンして仕事をしたいと思います。

おおくらさん

オンラインミーティングで、画面越しに伝わるほど「それは違います」という顔をしてくれるひしかわさん。うちにきていっしょにWSをしてくれたふくいさん。現実的な視点でひきしめてくれるメンターの安田さん。ありがとうございました。奈良を好きな人がいっぱいいることに気づけてよかった。わたしはナララボという企画をしています。今後も何かで盛り上げる機会があれば、積極的に関わっていきたいです。

バンビシャス奈良

かわかみさん

SNSがきっかけでならわいを知りました。仕事の合間、毎日眠りにつく前に、バンビシャス奈良について考える時間をもらえたことが楽しかったです。最終発表でもSNSを軸とした提案を行いました。いやあ、SNSの4ヶ月間でしたね。今後については、よくもわるくも白紙です。もう一つの名刺を持つのなら、“奈良関係”がいい!

はざまさん

5年後に、地元熊本で起業したいんです。バックグラウンドがまったく違うメンバーと仕事をできてよかったです。現地現物を見るのはすごく大事ですね。アリーナに入るだけでも、熱い思いを生で感じられました。ほんとうによかったです。

ふじたさん

あっという間でした。ふだんは事業開発の仕事をしています。一人で取り組むプロジェクトだったら、すごくせまい提案になっていただろうな。それぞれの視点・それぞれのバックグラウンドを持ち寄りつつ、3人で4ヶ月考えつづける。ほんとうに学びになりました。わたしは奈良と東京の2拠点生活をしています。でも、今まではただ移動しているだけだったなあ。人とのかかわりがなかったんです。ならわいを通じて高まった土地への解像度。奈良との接点を増やしていけたら。すぐに起業するという話ではありませんが、自分の武器を見きわめ、考えて、動いていきたい!

むすび

むすびは奈良市の仲川げん市長です。

「ならわいには、これまで18名が参加。そのうち5名が移住しています。奈良出身の人も、これから移住するひとも、奈良というフィールドでこれからも事業を立ち上げていただけたら。余談ですが、住民税の納付先は12月31日時点の居住地になります。あと2週間ありますので、みなさん前向きにご検討ください(笑)」

「さて、事業を立ち上げることは、自分自身を立ち上げることでもあります。35万人が暮らす奈良市のよいところは、身近に出会える多様な人材がいることです。最近は、海外企業のサテライトオフィス進出もはじまっています。海外との玄関口としても奈良市はおもしろい。奈良市役所では『NARA STAR PROJECT』『ふるさと納税の返礼品』をはじめとするメニューも揃えています!」

2024年度のプログラムが終了を迎えた今日、それぞれのならわいがはじまります。

おまけ

さて、ここからは番外編。

有志の参加者、市役所職員、TOMOSU、メンターたちはバンビシャス奈良のゲーム観戦に向かいます。

奈良交通の浅井さんに見送られながら、路線バスでロートアリーナ奈良へ。ベルテックス静岡を相手に、79-76の惜敗!しかし大接戦を繰り広げました。バンビシャス奈良も、ならわいも、引き続きがんばってまいりましょう!

(編集 大越はじめ 撮影 奥田しゅんじ 大越はじめ)